ごあいさつ
西に箱根外輪山を仰ぎ、東に大磯丘陵を臨み、足柄平野の中央を酒匂川がゆうゆうと流れて相模湾にそそぐ。北には雄壮な丹沢山塊、東南から南にかけては水産資源の豊富な相模湾。豊かな自然と風土にめぐまれた小田原には、いにしえから多くの人々が行き交い、現在まで脈々と発展を続けてきました。
このような豊かな歴史や自然を背景に、小田原市郷土文化館は、昭和30年(1955)に開館し、小田原の歴史、民俗、文化、そして自然に関する様々な資料を収集、展示し、市民や観光客の皆さんに親しまれてまいりました。
このたび、郷土文化館では小田原の歴史と民俗について解説する『小田原市郷土文化館常設展示ガイド 小田原の歴史と民俗』を刊行いたしました。
小田原の歴史を語る書籍は『小田原市史』をはじめこれまでも数多く刊行されています。こうした中で、本書では次に挙げる点に留意しました。一つは、タイトルが示すとおり、郷土文化館が開館以来65年以上にわたって収集してきた資料を中心に、本市の歴史や民俗を語ることです。そしてもう一つは、小田原市博物館基本構想に示された「まちをまるごと博物館にする」という視点を取り入れることです。これは、博物館という建物を越えて、市域全体を博物館と見立てて活動する、ということを意味しています。
本書では、こうした視点に基づき、市域に点在し実際に見学していただける遺跡や史跡、祭り等を紹介しています。さらに、コラムでは、市内の博物館や展示施設を紹介いたしました。本書をきっかけとして、多くのかたに郷土小田原の歴史に関心をもっていただければ幸いです。
令和3年3月
小田原市郷土文化館
凡例
・本書は、郷土文化館が所蔵もしくは寄託を受けた資料の紹介を中心に、小田原の歴史と民俗についてまとめたものである。
・本書の構成と、常設展示の構成とは一部異なっており、展示されていない資料もある。
・資料番号は巻末の掲載資料一覧の数字と一致するが、一部の図版についてはこの限りではない。
・年代表記については、主に和暦を用い、必要に応じて西暦を併記した。
・国指定文化財には◎、県指定文化財には〇、市指定文化財には□を資料名に付している。
・紙面の都合上、参考文献は省略した。
・本書の編集は当館学芸員田中里奈が担当し、湯浅浩が補佐した。
各章の執筆の担当は次のとおりである
表紙「小田原案内図」大正 2 年(1913)12月