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「ねんねのきへい」
「ねんねの騎兵」(大正11年)

解説

 「赤い鳥」(第8巻第2号、大正11年(1922)2月)初出、『祭の笛』「ねんねのうた」(アルス、大正11年6月)再録。
 銃を持ったおもちゃの兵隊が、とうもろこし畑で昼寝をしている間におもちゃの愛馬が逃げ出し、ぐるりと小旅行をして戻ってくる白昼夢を、おもちゃの兵隊が夢うつつに見る幻想的な作品。童話の一節のような物語的な童謡です。
 小田原市立中央図書館が所蔵する草稿は一点。草稿を「赤い鳥」の初出と比較すると3行目が異なり、「赤い鳥」では馬が歩く表現を「かぽかぽ」としていますが、草稿では後半の「かぽ」が消され、繰り返しの記号を用いた「かぽへ(※へは繰り返し記号)」に訂正しています。訂正箇所も含め、草稿は『祭の笛』に掲載されたバージョンと完全に一致し、タイトルの部分に文字サイズの指定が見えることから、この草稿は『祭の笛』に書かれたことがわかります。
 童謡を創作し始めた当初、白秋は「童謡は自然に歌ふがままにまかせるものだ」と考え、わらべ歌やナーサリー・ライムスなどの国内外の伝承童謡を考究しながら、子どもが一人で気軽に口ずさむことができるような音律を作り出すことを重要視しました。この作品も全体を通してリズミカルに口ずさむことができ、言葉の組み合わせを工夫して馬が軽快に駆け回る様子を表現しています。また、「わたしのかはいい龍騎兵」という書き出しは、おもちゃを友達のようにとらえる子どもの心に寄り添った白秋の創作姿勢が表れています。
 この詩が掲載されたのは『祭の笛』の「ねんねのうた」でした。「ねんねのうた」は、白秋が大正10年4月から同11年3月にかけて「赤い鳥」や「小学女生」などの児童雑誌に発表した乳幼児の眠りを題材とした11篇で、連作的な色合いを持ちます。「ねんねのうた」が集中的につくられたこの時期の白秋の実生活に目を向けると、ちょうど白秋の3回目の結婚から第一子の妊娠、誕生の頃にあたり、白秋自身も人生の転機を迎え、子どもや家庭的主題へ関心を寄せていた頃だといえます。
 連作としての「ねんねのうた」には、「ねんねの騎兵」のようなナラティブな作品のほか、子守唄としては「揺籠のうた」、「ねんねこ唄」(当館所蔵)などもあり、家庭生活に恵まれた白秋がこの題材に魅せられ、約一年の間にさまざまな詩作に取り組んだことがわかります。
 朗読:堀井 美香
 ※草稿のため、発表作とは記述が異なる場合がございます。
収蔵先/所蔵者
小田原市立中央図書館
種別
文学
所在地/展示場所
〒2500875 神奈川県小田原市南鴨宮1-5-30 小田原市立中央図書館

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